みなさんこんにちは。シェフ「H」です。
前回の「軟水」と「硬水」の話題に続き、今回も「水」についてのことになります。
「関東の味付けは濃くて、関西は薄い」
といいますが、関西は薄いわけではありません。
しっかり「出汁」を取っています。
それは関西は『昆布』で出汁を取り、関東は『鰹節』で出汁を取る傾向にあります。
関東はこの『鰹節』に負けないよう味の醤油を使うことで、より一層味が濃くなっていったようです。
これらはもともと、好みというより環境がそうさせたと言った方が良さそうなんです。
確かに関西は天皇のお膝元であったということで、上品な味付けになったとか、関東は江戸時代に肉体労働者の好む味付けとして濃くなった、という話しもあります。
江戸時代の海産物の流通は一旦大阪に集まったことで、昆布を入手しやすかったことから昆布を使うようになり、関東では比較的入手しやすかった鰹節が使われるようになったという背景があるようです。
ん?水の話が出てこないよ・・・
本題はここからです。
これらの「出汁」の違いの大きな理由となるのが「水」の違いなんです。
関東の水は大部分が「硬水」です。
つまりミネラル分を多く含む水です。
関東地方の土地は火山土が積み重なったいわゆる「関東ローム層」で出来ているため、地下水にミネラルが溶け込みやすいんです。
一方、関西の土地は柔らかい粘土質で出来ているため、地下水にミネラルは溶けにくく「軟水」になります。
こういったことが農産物にも左右するほか、「出汁」にまで影響していったんです。
「硬水」はミネラルが多いので、浸透圧が高くなりすぎて、昆布の旨味成分であるグルタミン酸が溶け出しにくいんです。
そのため関東では昆布出汁があまり広まらず、硬水でも旨味が出る鰹出汁が主流になったといいます。
逆に関西の水はミネラル分が少ないので、浸透圧もちょうど良くなり昆布の旨味が溶けやすくなります。
というわけで、関東と関西で好まれる「出汁」が違うのは、江戸時代の環境と「水」の違いが大きな理由となっていたんです。
それではここ愛知県はどうかなあ?
きしめんには鰹出汁の良く効いた、透明な出汁がよく合いますよね。
鰹出汁だけど、醤油はあまり使わない。
やっぱり東西のハイブリッドですね。