みなさんこんにちは。シェフ「H」です。
前回は「鶏肉」「馬肉」「鹿肉」「猪肉」の4種類のお肉の「隠語」についてお話ししましたが、今回はそれぞれの語源についてです。
それぞれの隠語には、きちんと由来や意味が込められているんです。
・鶏肉=かしわ
「かしわ」とは「柏」のことです。
その「柏の葉」に由来しているんです。
5月の端午の節句に食べる「柏餅」を包んでいるのが「柏の若葉」です。
若葉は鮮やかな緑色をしていますが、時期によっては葉は少し暗い茶色をしています。
その茶色の葉と鶏肉の色が似ていることから、鶏肉に「かしわ」という隠語が付けられたといいます。
現在、多くの鶏肉はブロイラーで肉の色はピンクっぽい色をしていますが、昔はそのような鶏はいないので、いまでいう「地鶏」のような筋肉質で赤みがかった色をしたお肉だったと思います。
・馬肉=さくら
これは色々な説があります。
一般的にいわれている有力な説は、新鮮な馬肉が桜色であることです。
捌いてすぐの馬肉は、他の肉と比較しても赤色が薄く、淡い桜色をしているといいます。
しかしこの説には、少々疑問も有るようです。
馬肉はそもそも桜色をしているかもしれませんが、江戸時代はまだ保存技術も確立されていなかったと思われるので、変色の早い馬肉が桜色をしている時間は極端に短かったと考えられます。
そこから、「馬がエサをたくさん食べて冬を越しているため、春の馬肉は脂がのって美味しいから」という「春に食べる馬肉が美味しい」ことから来た説も有力だと考えられています。
・鹿肉=もみじ
「鹿」と「もみじ」といえば・・・「花札」ですね。
花札は安土・桃山時代の「天正カルタ」、江戸時代上期の「ウンスンカルタ」から、江戸時代中期に現在使われている花札ができたといわれています。
花札には1月から12月まで4枚ずつ季節毎の花が描かれていて、10月の花札の絵柄は「紅葉」です。
そして、紅葉と一緒に描かれているのが鹿なんです。
そこから「鹿肉」を「もみじ」と呼ぶようになったとされています。
江戸時代には「鹿鍋」が町民たちの間でも人気で、専門店も多くあったそうです。
・猪肉=ぼたん
猪の肉が濃い紅色であるため、それが牡丹の花の色のようだったことから、「ぼたん」と呼ばれるようになったそうです。
しかし、江戸時代には「ぼたん」よりも「山鯨」という隠語の方が一般的だったようです。
当時は鯨を食用として捕らえていたことから、この名前になったそうです。
「食」は人々の生活を豊かにする重要なものです。
食事の自由を制限された中でも、知恵を絞って食べることを楽しんでいた江戸の人々の努力がこの名前に秘められていたんですね。