みなさんこんにちは。シェフ「H」です。
フレンチシェフと言ってますが・・・
実は自分でも疑問に思っています。
というか、疑問と共に自信もしっかり持っていませんでした。
何が疑問かと言えば、「フレンチ」という言葉です。
フランス料理とは何か?
そこを話し始めると、長く難しい話しになりそうなので、あまり深くならないようにしておきます。
「自分の作っているのは、はたしてフランス料理なのか。」
「フレンチとは言うものの、どこがフレンチなのか?」
いやいや、「フレンチレストランカフェ」と謳っているじゃないか!
自分で突っ込みたくなります。
料理の技法にフランス料理の技法を使っているということで、そう言っているだけで・・・
まあそれがフレンチと言えばそうなんですが・・・
なぜそんなことを思っているかと言うと、フランスで言われた言葉が今でも頭の片隅にずっとあるからです。
「お前は日本で”何料理”を作っていたんだ?」
と聞かれました。
日本人からすると、
「え!?」
です。
フランスまで来てフランス料理店で働いているんです。
今までフランス料理をやってきて、その技術や知識、経験の向上のために本場に来たのに、
「何聞いてんだ?」
です。
しかしながら、それは核心を突いた質問だということが、後々わかりました。
この質問は聞かれるまで気付かなかったことでした。
「”フランス料理”だよ。」
「え!日本料理じゃないのか?」
「違う。」
「調理場にフランス人はいるのか?」
「いない。」
ハハハハハ!
みんな笑っています。
「じゃあフランス料理じゃないじゃないか!」
「いや、フランス料理だ!」
「日本で、日本人しかいない調理場で作ってる料理は、”日本料理”だよ!」
確かにそうかもしれない・・・
その時から、
「日本で日本人だけで作っている料理は、本当にフランス料理なのか?」
そんなことを考えるようになりました。
フランス人は日本人をそんな感じで見ているんだ、ということもわかりました。
今でこそ、本場フランス本土に於いても、日本人がミシュランの三ツ星を取ったり、日本においてもフランス人に認められているようなレストランはたくさんあります。
僕がフランスへ行った当時は、まだまだその数も少なく、それこそインターネットの普及もまだまだで、日本人への偏見はありました。
日本人がどんなに頑張ってもフランス人にはなれないし、そもそも育ってきた環境、食べてきた物、見てきたこと、しゃべってきた言葉・・・
何から何まで違い過ぎて、フランス人に近づくことはできても、フランス人にはなれません。
それの穴埋めをするためにフランスへ来たのに、その穴はもっと大きくなったような気がしました。
「すべて真似事にしかならないのかなあ・・・」
最初は真似することから始まり、そこから広がっていくのですが・・・
「レシピだけ覚えてもしょうがないんだよなあ・・・」
見るもの聞くものすべてが初めてで新鮮でしたが、どこか「日本人は日本人」ということがいつも頭の片隅にありました。
日本で作る料理は「フランス風日本料理」なのか。
確かに日本で外国人が”日本料理”を作っていたら、ちょっとどうかと思ってしまうのは否めません。
それと一緒です。
まあ当たり前ですよね。
「フレンチシェフ」とは言っているものの、自分自身では疑問に思うことも多いのは、こんなことからなんです。
しかし最近、少し気持ちが楽になる勇気づけられた言葉を聞くことができました。
それは、フランス本土でも認められている日本のフレンチ界トップシェフの一人である「三國清三」シェフの言っていた言葉です。
三国シェフは、修行中にシェフ達から、
「お前は日本人なんだ。我々はクリーム、バター、チーズで育ってきた。お前は、味噌、米、醤油で育ってきたんだ。お前自信が根っこから旨いと思うのはどっちなんだ?そこに正直になれ!それが料理の本質なんだ。お前から出るのは、味噌、米、醤油を使ったものなんだ。そこから出るのがお前のフランス料理なんだ!」
と言われたそうです。
でも、当時それを日本でやった時には大バッシングだったそうですが・・・
「もっと自由にやっていいいんだ!」
とも言っていました。
その言葉を聞いた時は、
「あのシェフもそんな経験をしているんだ。」
とモヤモヤが少し晴れたように思います。
まだまだ僕は三国シェフの足下にも及びません。
そして全然勉強が足りない!
料理は奥深い・・・
改めてそんなことを思いました。