みなさんこんにちは。シェフ「H」です。
みなさんは「漬け物」はお好きでしょうか?
きっと好きな方が多いと思います。
僕も大好きです。
特に「奈良漬け」「粕漬け」が好きですね。
今では「朝市」や「道の駅」などで売られる、地元の農家さん自家製の漬け物が人気となっています。
そんな自家製の漬け物が食べられなくなるかもしれません。
この問題が今、物議をかもしているようです。
昨年6月に施行された「改正食品衛生法」で、漬け物の製造販売が許可制になり、衛生的な製造施設などの整備が求められるようになりました。
簡単に言うと、「農家の台所で作られたようなもの」はダメで、「衛生的に設備の整った工場のような場所で作られたもの」でないといけない、ということです。
2024年6月に完全実施となります。
自家製の漬け物を販売していた農家の中には、改正法への対応を断念して廃業する人も多いようです。
漬け物を作るのは年配の方が多いこともあり、今から新しく設備投資して継続するというのは難しいという人が多いからだそうです。
今回の改正法で、各都道府県で条例に基づいて届け出をすれば販売できたのが、工場などの衛生的な施設を整えていることを要件とする「営業許可制」に変わってしまったんです。
漬け物の産地では、すでに影響が出始めているということです。
秋田で有名な漬け物といえば「いぶりがっこ」です。
干した大根をいぶした漬け物です。
直売所で漬け物を売っている農家さんにアンケートを取ったそうです。
「営業許可を取得する」57%
「営業許可を取らず、漬け物販売から撤退する」35%
「未定」8%
と半分近くの人が漬け物づくりから離れることになる結果となりました。
そもそも厚生労働省が法改正に乗り出したのは、2012年に起きた浅漬けによる大規模な食中毒にありました。
札幌市の食品会社が製造した白菜の浅漬けが原因で、8人が死亡、169人が食中毒の症状を発症しました。
そもそも漬け物は塩分濃度が高く、食中毒というのは滅多に起こらないことなんです。
健康志向で、塩分濃度の低い浅漬けが好まれるようになり起きたものとされています。
「浅漬け」と「漬け物」は区別して考えられています。
「浅漬け」は、塩分濃度が低く、漬ける時間も短いです。
一方「漬け物」は、塩分濃度も高く、漬ける時間も長いです。
食中毒の件で、食品会社社長を取材したところ
「浅漬けじゃないと利益が出ない。漬け物では利益は出にくい。」
ということから「浅漬け」を作っていたそうです
それでは「浅漬け」と「漬け物」を区別して考えればいいと思いますが、厚労省の担当者は
「浅漬けとそれ以外を区別する線引きが難しい」
と説明しています。
また、製造・販売をやめる農家が出ていることに対しては
「小規模な事業者に対しては自治体が柔軟な対応をできるよう、自治体に助言していきたい」
と話しているそうです。
厚労省は「食中毒」を出さないようにするのが仕事ですから、そう考えるのもわかりますが、それだけでは終わらない「日本の伝統漬け物」の問題もあるようです。
全国各地にある「地元の伝統的な漬け物」が、今回の改正法で生産者の減少や、居なくなってしまう可能性も出てきています。
施行まであと1年くらいありますが、今後、問題が取り上げられる機会が多くなるかもしれませんね。